すうがくなどについてのメモ

数学を調べたり、教えたり、教えてもらったことのメモです

今日の授業

 今日の授業では$n$次対称群の共役類について話した。共役類が置換の型によって分類されるところに気づいた瞬間の生徒さんがとても嬉しそうで、こちらもテンションが上がった。

 今日は逆に生徒さんからファノ平面というものを教えてもらった。生徒さんは気づいていなかったが、ファノ平面はどうやら$\mathbb{F}_2$上の射影平面であることが分かったので、射影空間についても少し話した。

今日の授業

 今日はガンマ関数が形式的には$\mathbb{C}[t]$上の作用素$t\frac{d}{dt}$の固有多項式と結びつけられることについて説明し、ゼータ関数についてのヒルベルト・ポリヤ予想について紹介した。

 形式的な議論ではあるものの、レルヒの公式を通じてガンマ関数が$t\frac{d}{dt}$と結びつく様子は面白く、お客様にも楽しんで頂けたようで良かった。

$C^{\infty}$級と$C^{\omega}$級の違い

 こないだの授業で、「何回でも微分できる関数は、テイラー展開可能なのか?」という質問をもらい、「いや、そうとは限らないよ」という話をした。

 実際、$\mathbb{R}$上の関数

\begin{eqnarray}
f(x)
=
\begin{cases}
e^{-1/|x|} & ( x \neq 0 ) \\
0 & ( x = 0 )
\end{cases}
\end{eqnarray}

は$x=0$において$C^{\infty}$級(何回でも微分可能)だが、$C^{\omega}$級(べき級数展開可能)でない。この関数は$x=0$だけでなく、$\mathbb{R}$上で$C^{\infty}$級な関数だが、$x=0$では$f^{(n)}(0)=0$となり、テイラー展開可能でない。

 

このことについて、

http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yosihisa/lecture/2011/ex/ex-print1.pdf

に丁寧な説明があったので、メモ。

今日の授業

 今日は多様体についてあれこれ議論。分野的には幾何だが、テキストでは代数的なアプローチで議論している部分があり、その中で用いられていたベクトル空間の双対空間に関する事実を生徒さん自身に考えてもらう。最初に少しヒントを言っただけで、あとは自力で証明してくれて嬉しかった。

 数学書は、著者にとっては当たり前でも、自分自身はまだ習熟していない事実がサラっと使われていたりするので、そういうところで躓いてしまったりしますね。そういう時に気軽に質問ができる環境があるのとないのとでは、学習の効率はかなり違ってくると思います。

 

今日の授業

 今日の授業では、関数の合成に関する記法の話から脱線して、フレネル積分を紹介する流れに。
私「例えば集合$X$から$X$自身への写像$f$について、$f^2(x)$は普通$f(f(x))$の意味で使われるよ」
生「へえ」
私「でも、三角関数の場合には事情が違っていて、$\sin^2 x$と書くと$\sin (\sin x)$ではなく、$\sin x$の$2$乗の意味で使われるんだよね」
生「あーそれは見たことある」
私「個人的にはこれは混乱を招き兼ねない記法だと感じていて、$(\sin x)^2$のほうが意味がはっきりすると思うんだ」
生「えー?(見慣れない書き方に少し不満げ)でもその書き方でも、カッコ無しの$\sin x^2$で意味は通じない?$\sin$の中に$x^2$を入れることなんて無いんだし」
私「いや、あるんだなそれが。それがフレネル積分というやつで・・・」という会話を経てフレネル積分
\begin{align*}
\int_{0}^{\infty} \sin(x^2)dx=\sqrt{\frac{\pi}{8}}
\end{align*}
を紹介。この積分の値を求めることは、複素関数論のよく知られた演習問題で、一緒にそれを解いて確認した。

(私も普通は$\sin^2 x$を$\sin x$の$2$乗の意味で使っていますが、数学ってこういうところに小さな落とし穴があったりしますよね)

基本対称式と差積

 授業で解いた問題を、生徒さんと一緒に膨らませていたら、面白そうな事実が出てきたのでメモ。

$n$個の変数$x_1,x_2,\cdots,x_n$の基本対称式を$s_1,s_2,\cdots,s_n$とする。つまり、
\begin{align*}
s_1&=x_1+x_2+\cdots+x_n \\
s_2&=x_1x_2+x_1x_3+\cdots+x_{n-1}x_n\\
& \vdots \\
s_n&=x_1x_2 \cdots x_n
\end{align*}
とする。$\mathbb{R}^n$から$\mathbb{R}^n$への写像$F$を
\begin{align*}
F(x_1,x_2,\cdots,x_n)=(s_1,s_2,\cdots,s_n)
\end{align*}
と定めるとき、この$F$の$x=(x_1,x_2,\cdots,x_n)$におけるヤコビアン$|(DF)_x|$は差積に一致する。つまり、
\begin{align*}
|(DF)_x|=\prod_{i<j}(x_i - x_j)
\end{align*}
が成り立つ。証明は基本変形帰納法でできる。

 なんかこれ、基本的な事実な気もするし、ものすごくどこかで使えそうでもあるけど、対称式の理論で使われていたりするのだろうか。

今日の授業

 今日は二コマ授業。一つ目の授業では二つの閉曲線がホモトープかどうかであれこれ議論し、最終的にコーシーの積分定理に帰着させて解決することができた。といってもかなりの部分は生徒さん自身の手によって進められていて、頼もしい。

 

 もう一つの授業は、群論に関する具体的な計算をいくつか。具体的な群で交換子群を求めてみたり。こちらも生徒さんがどんどん計算してくれて、順調に議論が進んだ。群論に興味をもってくれているようで、とても嬉しい。