$C^{\infty}$級と$C^{\omega}$級の違い
こないだの授業で、「何回でも微分できる関数は、テイラー展開可能なのか?」という質問をもらい、「いや、そうとは限らないよ」という話をした。
実際、$\mathbb{R}$上の関数
\begin{eqnarray}
f(x)
=
\begin{cases}
e^{-1/|x|} & ( x \neq 0 ) \\
0 & ( x = 0 )
\end{cases}
\end{eqnarray}
は$x=0$において$C^{\infty}$級(何回でも微分可能)だが、$C^{\omega}$級(べき級数展開可能)でない。この関数は$x=0$だけでなく、$\mathbb{R}$上で$C^{\infty}$級な関数だが、$x=0$では$f^{(n)}(0)=0$となり、テイラー展開可能でない。
このことについて、
http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yosihisa/lecture/2011/ex/ex-print1.pdf
に丁寧な説明があったので、メモ。
今日の授業
今日の授業では、関数の合成に関する記法の話から脱線して、フレネル積分を紹介する流れに。
私「例えば集合$X$から$X$自身への写像$f$について、$f^2(x)$は普通$f(f(x))$の意味で使われるよ」
生「へえ」
私「でも、三角関数の場合には事情が違っていて、$\sin^2 x$と書くと$\sin (\sin x)$ではなく、$\sin x$の$2$乗の意味で使われるんだよね」
生「あーそれは見たことある」
私「個人的にはこれは混乱を招き兼ねない記法だと感じていて、$(\sin x)^2$のほうが意味がはっきりすると思うんだ」
生「えー?(見慣れない書き方に少し不満げ)でもその書き方でも、カッコ無しの$\sin x^2$で意味は通じない?$\sin$の中に$x^2$を入れることなんて無いんだし」
私「いや、あるんだなそれが。それがフレネル積分というやつで・・・」という会話を経てフレネル積分
\begin{align*}
\int_{0}^{\infty} \sin(x^2)dx=\sqrt{\frac{\pi}{8}}
\end{align*}
を紹介。この積分の値を求めることは、複素関数論のよく知られた演習問題で、一緒にそれを解いて確認した。
(私も普通は$\sin^2 x$を$\sin x$の$2$乗の意味で使っていますが、数学ってこういうところに小さな落とし穴があったりしますよね)
基本対称式と差積
授業で解いた問題を、生徒さんと一緒に膨らませていたら、面白そうな事実が出てきたのでメモ。
$n$個の変数$x_1,x_2,\cdots,x_n$の基本対称式を$s_1,s_2,\cdots,s_n$とする。つまり、
\begin{align*}
s_1&=x_1+x_2+\cdots+x_n \\
s_2&=x_1x_2+x_1x_3+\cdots+x_{n-1}x_n\\
& \vdots \\
s_n&=x_1x_2 \cdots x_n
\end{align*}
とする。$\mathbb{R}^n$から$\mathbb{R}^n$への写像$F$を
\begin{align*}
F(x_1,x_2,\cdots,x_n)=(s_1,s_2,\cdots,s_n)
\end{align*}
と定めるとき、この$F$の$x=(x_1,x_2,\cdots,x_n)$におけるヤコビアン$|(DF)_x|$は差積に一致する。つまり、
\begin{align*}
|(DF)_x|=\prod_{i<j}(x_i - x_j)
\end{align*}
が成り立つ。証明は基本変形と帰納法でできる。
なんかこれ、基本的な事実な気もするし、ものすごくどこかで使えそうでもあるけど、対称式の理論で使われていたりするのだろうか。