すうがくなどについてのメモ

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Poissonの和公式の感覚的な導出

 前回の記事では$\sum_{n=-\infty}^{\infty} q^{n}$のデルタ関数としての解釈について書いたが、$q$は周期$1$なので、実数全体では各整数上のデルタ関数、すなわち
\begin{align*}
\sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{2\pi inz}=\sum_{n=-\infty}^{\infty}\delta(z-n)
\end{align*}
だと解釈できそうだ。この解釈を用いると、Poissonの和公式を次のように導くことができる。

 急減少関数$f$に対し、そのFourier逆変換は
\begin{align*}
f(x)=\int_{-\infty}^{\infty} \hat{f}(y)e^{2\pi i xy}dy
\end{align*}
で与えられる。ここで、$x$を$x+n$としたものをすべての整数$n$にわたって足し合わせ、次のように変形していく。
\begin{align*}
\sum_{n=-\infty}^{\infty}f(x+n) &=\int_{-\infty}^{\infty} \hat{f}(y)\sum_{n=-\infty}^{\infty}e^{2\pi i (x+n)y}dy \\
&=\int_{-\infty}^{\infty} \hat{f}(y)e^{2\pi i xy}\sum_{n=-\infty}^{\infty}e^{2\pi i ny}dy \\
&=\int_{-\infty}^{\infty} \hat{f}(y)e^{2\pi i xy}\sum_{n=-\infty}^{\infty}\delta(y-n)dy \\
&=\sum_{n=-\infty}^{\infty} \int_{-\infty}^{\infty} \hat{f}(y)e^{2\pi i xy}\delta(y-n)dy \\
&=\sum_{n=-\infty}^{\infty} \hat{f}(n)e^{2\pi i nx}
\end{align*}
$2$行目から$3$行目にかけて、上記のデルタ関数の解釈を用いた。この式で$x=0$を代入すれば、Poissonの和公式が得られる。
 この証明は厳密なものではないが、実際に超関数の理論の枠組みでこの証明を正当化することもできる。ただ、私自身の理解がまだ浅いのでそれについては書かない。

 

 この導出方法は、「すべての整数$n$にわたって$f(x+n)$を足し合わせると、Fourier逆変換の方では波$e^{2\pi i ny}$がすべての整数$n$にわたって足し合わされていることになり、振動数$y$が整数でない波たちは打ち消し合って消えてしまい、振動数が整数の部分だけ残る」という直感的な解釈ができるため、感覚的に理解できた気持ちになれる。